2018年10月3日水曜日

学校通信『かがやけ』10月号


進化は弱者の特権 仲村 元 水族館プロデューサー ~

 

水族館プロデューサー、それが私の仕事だ。プロデュースの依頼をいただく水族館に、は集客がままならず困っているところが多い。立地の悪さ、厳しい気候、貧弱な展示生物などさまざまな「弱点」を抱えた水族館を、集客できる水族館にリニューアルさせることが期待されている。

その中でも、北の大地の水族館(旧称:山の水族館)の弱点は並外れていた。立地は北海道の山の中の寂れた温泉街、冬になれば零下二十度にもなる超寒冷地、展示されているのは川の魚だけ、さらに新水族館建設の予算は一桁違いに少なかった。

そんなに弱点だらけで困らなかったのか?とよく聞かれる。ところがそれが困らない。困らないどころか弱点を見つけるたびに嬉しくなるほどだ。なぜなら私にとって、弱点こそが進化のテコにも武器にも使える宝なのだから。

北の大地の水族館では、大きな弱点である酷寒と極貧をアピールした。冬には氷の張る世界初の水槽をつくり、極貧でも世界唯一の水族館へと大進化させたのだ。

弱点を克服などしていない。寒さを克服するには大きなドームが必要だろうが、そんなお金はないし、やったところで常夏の沖縄に負ける。それよりも寒さを利用して沖縄や東京には真似のできない展示を開発し、貧乏を利用して他にはできないアピール方法をとり、今までにない水族館へと進化させたのだ。

実は、生物の進化というのは、そのようにして行われてきた。陸上で食い詰めた弱者が、だれも見向きもしなかった海に向かい、海の王者イルカへと進化した。すばしこさもなく木に登るのも下手だったネコが、巨大化して群れをつくり百獣の王ライオンになった。

現状で立派に生きていける生物に進化の必要はない。弱点のある生物にこそ常識はずれの進化をする必要性と資格があるのだ。そして、弱点の多い水族館にも、だれも考えられなかった進化をする必要性と資格があるのだ。

それはきっと人にも当てはまる。私は子どもの頃から記憶力が弱いことを自覚していた。最初に気づいたのは、九九を暗記しなくてはならなくなった時だ。みんなと並んでいたのは2の段だけ、3の段からは周りの子たちにどんどん離されていく。

まずい!このままでは自分はだめだ!そう思って、好きな読書も止めて必死に暗記したのだけど、覚えた先から忘れていく。めいっぱい焦りながら、九九の表を見ていたら、ふとすごいことに気づいたのだ。

それは九九の計算の半分はひっくり返せば同じ計算だということ。この真実を見つけた私だけには、暗記しなくてはならない九九は半分になった。おかげで記憶力の弱かった私が、クラスの誰よりも早く九九を暗記できた。

この裏技のせいで、今でも7×3を3×7に言い換えなくては計算できないのだが、そんなことは小さなことだ。この日をきっかけに弱点利用の真理の探求が始まったのだから。弱点は別の方法で補える、弱点はみんなの知らない発見の手がかりになる、弱点は進化への足がかり、弱点は面白い!

生まれ持った弱点をなかったことにするのは簡単だしやってしまいがちなのだが、それじゃ人生なんの面白みもないし成長もない。しかしだからと言って、その弱点を努力で克服できるのはごくわずかな優れた人だけだ。弱者は自分の弱点を認めた方がいい。そして克服するのではなく、弱者が生き延びるための他の道を考えるのだ。そうすればきっと道は拓ける。それが弱者の特権である進化への道だと思うのだ。

 

~ 横山アドベンチャーについて ~

 

1年生から6年生の子どもたちで構成した16班が、2班ずつペアになって8教室に分かれ、6年生がリーダーとなりゲームを協力して運営します。  当日は、きのみ園から園児が遊びに来る予定です。保護者のみな様やご近所のみな様も是非お越しください。詳しくは下記のとおりです。
                   記

 

・日 時    10月5日(金)8:50~10:15

・内 容    児童が考えたゲームなど

・その他    自家用車は、上記時間帯のみ運動場に駐車願います。